フォトアルバム
Powered by Six Apart

最近のトラックバック

 

« 2007年11月 | メイン | 2008年1月 »

『いのちの食べ方』:余白のある人生を

 なんとも、あっという間に今日は大晦日です。02_2
数年前までは年末は家にいるのが当たり前で、お家の用事でセキチューにお掃除道具を買いにいく、とか、お正月のお花生け忘れていた!とかあわてて花屋さんへ、以外は外へ出掛ける事はなく大掃除やら年越し準備に追われている、というのが大抵のご家庭の姿だったのではないでしょうか。
 私もそんな一人だったけれど、シネマテークたかさきで一年を締めくくる方々が多くいらっしゃる事に驚くのと嬉しいのと、時代が変わって来ているのかなーなんていう気もしています。

皆さま、本年本当にお世話になりました。また、来年もシネマテークたかさきでお会いしましょう。
来年もどうぞよろしくお願い致します。

 そこでひとつ。
年始第一弾でこのタイミングに選んだ、『いのちの食べ方』を少しご紹介を。

食する ということは、生きる事と直結しています。血となり肉となる ひいては健全な体をつくるわけです。また、年越しにおそばを食べたり、お正月におせち料理をたべたり、お重の中に詰められた食品には祝いや長寿や繁栄を願ったさまざまな意味合いのある食品で埋め尽くされます。

生きるために私たちが食べているものたちは、さて、どうやって育てられ飼育され出荷されスーパーに並び私たちの手元に届くのでしょうか。
それを知る鍵が、この『いのちの食べ方』には記されています。

オーストリアのドキュメンタリー作家、ニコラウス・ゲイハルター監督によるこの作品。自国では作家性の強いドキュメンタリーを数々手がけている監督さんですが、日本に紹介される作品としては本作が始めてです。
 原題は『OUR DAILY BREAD』私たちの日々の糧 という意味です。これはナレーションもなければインタビューもない、ただ、生産現場にカメラが侵入し、その様子を収めています。
広大な畑、食肉加工工場、家畜の飼育現場などなどでのオンラインシステムや飼育状況、収穫の模様などが映し出される訳ですが、そこに私たちの想像力というものが加味される事でこの<不思議な世界>を個々が噛み砕き理解するに至ります。
 ナレーションなどを一切省く事で、物事を知り理解するという自分自身でしかなし得ない余白を、観客に与えてくれる訳です。これはなかなかすぐれたドキュメンタリー作品だと思います。
昨今の世間を騒がしている食事情を考えてみても、ともすると、大量生産だからこその問題点や、機械科への危惧などを喚起してしまいそうなネタではありますが、それをただ<映し出す事>で返って私たちは、その余白によって自分の力で考えられるに至るのです。
 知らない事は山ほどあり、その世界を垣間みる事で知らされる事の大きさ。私たちは自分たちが生きる為に命あるものをどのように食しているのか、そしてそれらは私たちが生きる為に生まれ加工されるのか。そう思えば、やはりそれは いのちをいただく 事につきるのかもしれません。
 食べ物を前に手を合わせて言う「いただきます」に一層心をこめたくなります。
 是非是非ご覧頂きたい一品です。

それでは。皆さま、よいお年を。
07

ONCE ダブリンの街角で

Once  あっという間に3周年を迎え、そしてシネマテークたかさきに2スクリーン目が出来て早2週間が過ぎようとしています。
 皆さんもう足を運ばれましたでしょうか…。

皆さんもうお気づきとは思いますが、全部、とはいいませんがほとんどの場合において、シネマテークたかさきで上映する作品というのは、並々ならぬ思いが込められています。その上映時期やタイミング、作品の並びについては、全てをご説明は出来ないにしてもそれなりの何かがあったりします。
 2スクリーン目のこけら落としに私たちが選んだ『ONCEダブリンの街角で』、それから『インランド・エンパイア』1階で上映の『パンズ・ラビリンス』に『ミリキタニの猫』それぞれが、シネマテークたかさきが2館体制になって今後どのような方向で走っていくのか、どのような映画館でありたいのかを 皆さんにお伝え出来るラインナップと自負しています。
 それぞれテイストは違いますが、映画の力を備えた作品ばかりです。

 特に『ONCEダブリンの街角で』は作品のバジェットからいけば小規模作品です。アメリカ公開時には2館でスタートだったそうです。それがみるみる間に140館公開にふくれあがったと言います。とはいえ、アメリカでの140館という数字自体がそれほど大きな数字ではないのでしょうが、2が20倍になったという事実はすごいことです。それだけ、多くの人の心を捉えたということになります。
 作品の本質は作られた段階で決まっている訳なのでそれが伝わるか否かはその後の問題でもあると思います。その後の問題自体は映画を上映する立場にあるものがじっくりやっていけばいいことですが、力のある作品を上映せずに終わる事程もったいない事はありません。
 そういう意味で、この『ONCE ダブリンの街角で』をご紹介出来る事が嬉しく、そして見て頂ける事が嬉しいと思います。これがヒットすれば尚更嬉しい。
 ダブリンの街角で歌手なる事を夢見て歌い続ける男は、ある日チェコから移民して来た女に出会います。たまたま男と女だったというだけで、恋愛ありきのスタートではもちろんないのだけれど、最初からお互いのペースでしっくりくる関係を築ける訳でもありません。が、音楽がそれぞれの心を惹き付け繋いでいきます。そのくだりがなんだかとてもロマンティックでもあり、素直に共感も出来るのです。
 魂が触れ合う相手が宇宙のどこかに必ずいて、その形はさまざまであるけれども、自分がいて、人がいるからこそ、自分の存在自体を肯定し前へ進む力を与えられる。その出会いのきっかけを作るのが音楽であり、人生の一歩を進む為に背中を押してくれるのも音楽だった、そんな物語です。
 主人公の男をアイルランドの実力派バント、ザ・フレイムスのフロントマンであるグレン・ハンサードが、女をチェコのシンガーソングライターのマルケタ・イルゴロヴァが演じているのですが、この二人の存在自体がすでに音楽に包まれていてまさに映画と人物がぴったりと合っています。
監督は、かつてザ・フレイムスのベースを務めていたジョン・カーニー。音楽への愛情と人間への愛情がすべて詰め込まれているように感じられる素敵な小品です。シネマテークたかさきという小さな劇場だからこそなおさら、音楽と映像にすっぽりと包まれた感覚でご覧頂けると思いますので未見の方は是非是非ご覧ください

破壊 ~ 3周年にあたって ~

Sankyo  今日でシネマテークたかさきは3周年。お客様に支えられた3年間だったと心から思う。ご存知の通り、今月15日には2スクリーン目もお目見えとなる。節目の3年。スタッフ一同、心を新たに次なるスタートを切りたいものだ。
 この12月4日の記念日の上映作品のひとつが『長江哀歌』だということに、深い感銘を覚える。それはこの映画のテーマのひとつが「破壊」に置かれているからだ。これからの時代は"何をつくるか"に主題が置かれるべきではない。僕らが見据えなくてはならないのはきっと"何を壊すのか"といったことだ。「破壊」に臨むにあたっては鋭い感性を伴うべきである。その優れた感性の有無がきっと国の将来をも決めてしまうであろう。『長江哀歌』で語られる破壊には積極的なそれと、消極的なそれがしっかりと描かれていると思う。積極的な破壊とは強固な国策に基づく、可視的で物理的なものである。しかしむしろ口に出して語られるべきは、時として積極的な破壊に伴って二次的に発生する消極的な破壊の方ではないか。それは文化や伝統、人々の心に深く根ざす何かへの意図しない破壊である。12年前、僕は1ヶ月ほど中国大陸を放浪したことがある。あのとき僕が歩くことで感じ得た中国人のアイデンティティーのゆらぎのようなもの。あの頃、ちょうど三峡ダムの工事が始まったのだ。そして今、河の流れと景勝地が姿を変えて、さらに次の何かを変えようと迫っている気がしてならない。
 システムにおいて、ハードにおいて、そしてそこに関わる人心において、既に何が壊されていて、何が壊れゆく現状にあるのか。映画界を見つめる上でも、このような視点を得ることはきわめて重要だと思う。新しい劇場をつくっている過程だからこそ考えたいことだ。映画とは、喜びと悲しみ、笑いと涙が同居する極上のエンターテイメントだ。しかしながら、もう何十年も映画界を語るときのBGMといえば、それは「哀歌」と決まっていた。そりゃあ「哀歌」もいい。でも僕がホントに聞きたいのはやはり映画への「賛歌」なのである。

 撮らなければならないものが撮られている。『長江哀歌』はジャ・ジャンクーの嗅覚を存分に感じることができる傑作だ。前作『世界』と比べると、初日から多くのお客様にご覧いただけている。開館以来の3年間を僕らと一緒に歩んでいただいた当館のお客様の「映画への嗅覚」を僕は誇りに思う。

まもなくシネマテークたかさき2がオープン!

12月15日(土)にいよいよシネマテークたかさき2がオープンします!!

オープンにあたり、シネマテークたかさきの2軒隣のおいしいお蕎麦屋さん「十割そば さぎょう」さんから素敵なご提案をいただきました。

12月15日(土)・17日(月)・18日(火)の3日間限定で、当館総支配人・茂木正男のお気に入りセットを特別に販売していただけることとなりました!(通常は茂木さんしか食べられません!)

気になる内容は…・・、

◎茂木セットA ¥900 (そばの実けんちん・半そば・まぜごはん)

◎茂木セットB ¥750 (そばの実コロッケ・半そば・まぜごはん)

◎茂木とろろ  ¥800

※全てホットコーヒー付!

さぎょう さんの冬限定「そばの実けんちん」はさむ~い時季にぴったりのあったかメニューです。

茂木さんはじめ、シネマテークたかさきスタッフのお気に入りの一品、是非お試しください!!

ほかにももちろん色々なおそばの種類がありますよ!

個人的にはチョコレートケーキが大好きです。お蕎麦屋さんなのに…おいしい!

シネマテークで映画を観るときの腹ごしらえに是非どうぞ~。

20071202152526_2