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11月27日(土)『トルソ』舞台挨拶レポート

11月27日(土)
山崎裕監督と、主演:ヒロコ役の渡辺真起子さんによる舞台挨拶が行われました!
そのときの様子をレポートしたいと思います!

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司会(以下―):山崎監督は日本を代表するカメラマンの一人なんですが、今回は監督ということでお呼び致しました。
『トルソ』の企画の段階から順を追ってお話をお聞きしたいと思います。『トルソ』の企画自体は30年前に浮かんだというエピソードを読んだのですが。

山崎裕監督(以下Y):ちょうど70年代頃にテレビのドキュメンタリーをやっていて、ヨーロッパのコペンハーゲンかハンブルクの取材だったと思うのですが。その頃ヨーロッパは性が解放されている頃で、街にはポルノショップがあったり、映画館ではポルノ映画を上映していたりしていていました。そういった社会情勢みたいなものを取材したときがありまして、そのときポルノショップで見たトルソにすごくショックを受けまして。それを通じてその時代の女性達がセックスについて、男性についてどう捉えているかということで映画が作れるんじゃないかと思ったのがきっかけです。

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―それからの三十数年というと監督ご自身のなかにも色々あったと思いますし、日本自体も色々変わってきたところで、いま、映画をつくろうと思った大きなきっかけというものがあったら教えて頂きたいのですが。

Y:たまたま仕事の関係でその後10年ぐらいロンドンに住んでいました。そのときイギリスで自主映画の人達と一緒に映画を撮ったことがあって。そこの環境でヨーロッパのその頃の女性たちの意識を追ったら、わりと簡単に撮れるなと思って。短編を撮ろうと思って準備はしていたんですが、その後、結果的に実現できなくてそれで日本に戻って来てずっとテレビの仕事をしながらインタビューなどしていて。すぐに映画の世界に入っていかなかったのですが。
是枝監督と一緒に映画をするようになってから何本か映画を続けて撮りました。もともと僕がカメラマンになったきっかけというのも、子供の頃から映画が好きだったので。いつかは僕も映画を作るぞ!という気持ちはあり、いつもそのエピソードを思い出していました。たまたまタナダユキ監督の『俺達に明日はないッス』を一緒に撮影をしまして。とても低予算だったのですが、そのときの身軽に低予算で撮ったという経験のなかで、低予算の映画をフットワークよくつくるという今の日本の状況のなかで、これなら出来るなと思いまして。それで70年代のときの日本の社会状況と変わってきた女性達の姿を観察していると、ふと今回の『トルソ』の姉妹の話を思いつきました。

―聞いたところによると脚本はぱっとすぐに書けてしまうと伺ったのですが、脚本を書いていく段階で主演は渡辺さんにという風に浮かばれたのでしょうか。

Y:渡辺さんとは短編作品『Share』で撮っているということもあって、それ以外にも個人的にいろいろと・・・

渡辺真起子さん(以下W):いろいろって言うと怪しいじゃないですか(笑)

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Y:怪しいことはなくって(笑)いろいろなことを相談したり、話を聞いてもらっている関係で。書いているときに、30代後半で40歳にさしかかる女性を主人公にしようっていうときに、実際に彼女がやってくれるかどうかってことは別にして、頭のなかに渡辺さんを主役でということはありました。『俺達に明日はないッス』の安藤サクラさんとも仕事をしてて、組み合わせとしては面白い姉妹がつくれるかなと書いているときに思いました。実際にやれるかわからないけれど、イメージとしては有力候補でした。

―監督からお話を頂いて、渡辺さんは率直にどう思われたでしょうか。

W:最初、本を読む前に「こんな感じで考えているんだけどどうだろう。」と監督から具体的に話を聞いていて、それで本を読んで、本当に作れるのかなあなんてモタモタ考えていたら「モタモタしてたら作れないぞ!」と言われちゃいまして(笑)上手く巻き込まれたというか(笑)

―山崎さんが監督をされるということに驚きなどはありましたか?

W:それは全然ないですね。もともと交流があったということもあったりして、普段制作の現場以外にお話をさせて頂いたりしていたし。短編の作品の時はカメラを持っていらっしゃいましたけど、監督として思っていましたし。違和感はなかったですね。

―山崎さんが作品を撮るっていうところで、すごく期待が大きくて。あのカメラの方が監督をする、しかも渡辺真起子さんが主演だということで、どんな作品になるのだろうと、正直、すごく期待をしていました。それが本当に期待を上回る作品で、すごく嬉しかったんですけれども。
本作は女性映画だという感じがしまして、こんな風に繊細に撮られるんだという感覚を私は一番初めに思ったのですが。監督のなかで撮り始めるときに一番気をつけようというというところはありましたか?

Y:僕は基本的に女性が大好きですから(笑)日常生活のなかで、女性の不思議な点だとか、素晴らしい点だとか観察していまして。フェミニストを自称していますけれども。いわゆる、男性監督が撮っている女性の描き方は、男性にとっての女性が誇張されていたり、ゆがんだりしている姿が多いと思っていて。また、女性監督が女性を撮っている場合、僕は男性が撮ったものよりも共感する部分が多いのですが。なんだかそれも、女性独特の自虐的な、女性はいじわるであったりというような感じがします。そういう目線ではない、僕なりの感じている女性の素敵さとか面倒くささとかいやらしさとかも含めて、女性そのものをもっと捕まえたいなというつもりでは撮っていました。今回、女性の観察映画という風に言っていますが、そこは気をつけました。誇張はしたくないという。

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―すごく共感する部分というか、こういう感覚があるなというところが非常にあったのですが。渡辺真起子さんがヒロコを演じるときにどんな風な気持ちづくりというか、役づくりと言っていいのかわからないのですが、どのように臨まれたのかお聞きしたいのですが。

W:そうですね。役づくりが自分はいつも上手くできないんですが、自分だけの気持ちをつくるのが難しくて。やっぱり監督と打合せをしていくなかだったり、衣装さんだったりヘアメイクさんだったりが入ってきてだんだん出来て行くような感じですね。山崎監督には「のびのび女の人を観察できればいいんじゃないかなあ。」みたいな感じでと言われまして(笑)やってるときは具体的に演出があったので、それを素直にやってました。あんまり構えないでラフにやってました。

―プレスを読んだ時に、衣装が渡辺さんの自前のお洋服を持ち込んだということが書いてありましたが。

W:でもそんなにいっぱいない(笑)

Y:自前のものもありましたね。衣装合わせの時に参考にして。他に中村さんとか安藤さんとかも自前で持ってきてもらって、衣装さんに持ってきてもらったものと混ぜこぜで使っていました。

W:みんなで、コレいいんじゃないとか言いながら決めました。

―本当に渡辺さんははつらつとした、すごく笑顔の素敵な方だという印象があるのですが。作品だとわりと気持ちを押し込めるという、非常に心の機微を繊細に演じられる方だからそういった役が多くなると思うのですが。今回の『トルソ』は、またちょっと違う印象を受けまして。笑顔があまりないんだけれども、何かこう最初と最後の表情が格段に違うというところで、観ているこっちも一緒に成長できたという感覚があるのですが。渡辺真起子さんはこの作品に参加して、何が残りましたか。

W:撮ってる最中は、山崎さんに振り落とされないように、正直に言えばどっか褒められたいという思いもあるわけじゃないですか。でも山崎さんの先回りをしてドーンと立ちたいくらいの意気込みもあったんですけど、でも人としての経験もまだまだ足りず、必死で付いていって。文句も出たし。「なんだったんだろう!」って自分でも思ったりしたんですけど、少し時間が経ってから、私ではないヒロコさんていう人、確実に私ではないんだけど、一緒に成長したなというか、すこし世界を上手に受け入れられるようになったなということは思いました。『トルソ』のなかの彼女の輝きはそういうところにあったのかなとも思いました。

―時間が足りないくらいいくつもお話を伺いたいシーンがあるんですけれど。ARATAさんが出てこられるシーンは大きなきっかけのある部分なのかなと思うのですが。映画全体で男性の姿を消しているところで、彼が出てきたというところが非常にポイントになっていると感じるのですが、そのあたりの演出についてお話を聞かせてください。

Y:もともと男性をなるべく消すというのは、初めから考えていて。最初ぱっと書けた本というのはほとんど男性なしというもので。それは、ああいうストーリーのなかに男性を描くということはこちらに責任があって。そうするとヒロコとかジロウとかお父さんとかの存在をリアルに描かなければならないという責任があって。その葛藤をドラマにしたいというわけではない。そういうものを背負った女性の生き様みたいなものを、なるべく皆さんの想像でつくってほしいなと思っていました。
ただなんとなく、ヒロコがトルソとか性的なものに入り込んでいるというものではなくて、基本的に生身の男性に対するアンテナを捨ててるわけではないっていう。
参加している脚本の佐藤有記さんとディスカッションしながら、やっぱり生身の男性との接触を映画構成にいれることになり、ARATAくんを起用しました。
だけど、ヒロコはそこで器用な関係性をつくることは出来なくて。すべての男性を否定しているわけではないし、性的な何かにのめり込んでいるマニアックな女性でもないし。普通の女性なんだけどっていうところを感じさせたくてこのシーンをつくりました。

―なんでもARATAさんが提案してきたものをその場で採用したとか。そして真起子さんにはお伝えしなかったとか・・・

W:何それ!?(笑)

Y:(笑) もともと、完成台本を書いているときに佐藤さんとキャッチボールしていたんですけど、ああいったバーでいやらしくなく女性をナンパする術を僕も佐藤さんも知らなくて。いやらしくなく、キザに声をかけるシーンをつくるにはどうしたらいいのかということで。基本的な部分は僕がつくったんですけれど、そこでARATAくんのキャラクター、動物的にギラギラしているわけでもない、端整で美しく嫌味の無い魅力的な男性というキャラクターで、最後の最後に二人がふっと接触するきっかけを台本上では書かないから考えてきてくれ、宿題にする。というふうに言いまして(笑)そしたら彼が実体験で、何年か前に失神して助けられたことがあると言ってまして。その後どうなったかは僕は知りませんが(笑)
そういったきっかけで二人が接触できる経験があったからそれをやっていいですかって言って。じゃあ内緒でやろうかって言って(笑)驚かせてやろうって(笑)それで他の人には一切言わず、エキストラで来ている騒がしい人達にも何も言わず、確かマスターも知らなかったかな。

W:すっごい驚きましたよ!あの人どうしちゃったんだろうって(笑)しばし静かな緊張感のなか撮影が続いていたんで、破壊したわけですよARATAさんが、ばーんと。普通に素でみんな「大丈夫?」って(笑)カメラが回ってるとかどうでもいいくらい大丈夫ですかってなって。あまりにも最初、救急車を呼ばれそうな倒れ方をしたんで、次は抑えてもらって(笑)

Y:2回やりました。倒れる瞬間は最初のを使って、起き上がるところは2回目を使いました。

W:勇気のいることだと思うんですよ、それを俳優がやるのっていうのは。あのー・・・、変な言い方をすればハズしちゃえば手が読まれてしまってアレ?ってなってしまうと思うんですよ。その勇気もすべてむきだしの役者さんです。

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Y:僕はドキュメンタリーもやってるし、是枝監督の『DISTANCE/ディスタンス』のときARATAくんとか他の役者さんが勝手気ままに動き回るのを撮るっていうのもやってきたし、河瀬監督もそういうところがあったから、そういう雰囲気には僕は慣れていたし。面白そうなのがあったら撮って、「今のいただき!」みたいな(笑)

W:で、そういうことがあって、私は何も知らないからいいやと思ってそのまま任せてみて、あるときふとカットがかかって「ああ、そういうことだったんだ!」ってわかったんです。

―楽しいお話がたくさんして頂いているのですが、時間となりましたので最後に一言ずつお願いしたいと思います。

Y:本日、お集まり頂いてありがとうございます。お友達、ご家族、ご親戚にお声をかけて頂いて、一人でも多くのお客様と物語を共有できたらこの夏の私が救われます(笑)女性という生き方というか、人としての生き方がすこしでも豊かになればいいなあと思います。どうもありがとうございました。

W:右に同じくというか(笑)2週間で多くの人に観ていただけたら嬉しいと思います。よろしくお願い致します。

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山崎監督、渡辺さん、
貴重なお話を聞かせて頂きどうもありがとうございました!

『トルソ』は12月10日(金)までの上映です!
皆さまのご来場お待ちしております!