ONCE ダブリンの街角で
あっという間に3周年を迎え、そしてシネマテークたかさきに2スクリーン目が出来て早2週間が過ぎようとしています。
皆さんもう足を運ばれましたでしょうか…。
皆さんもうお気づきとは思いますが、全部、とはいいませんがほとんどの場合において、シネマテークたかさきで上映する作品というのは、並々ならぬ思いが込められています。その上映時期やタイミング、作品の並びについては、全てをご説明は出来ないにしてもそれなりの何かがあったりします。
2スクリーン目のこけら落としに私たちが選んだ『ONCEダブリンの街角で』、それから『インランド・エンパイア』1階で上映の『パンズ・ラビリンス』に『ミリキタニの猫』それぞれが、シネマテークたかさきが2館体制になって今後どのような方向で走っていくのか、どのような映画館でありたいのかを 皆さんにお伝え出来るラインナップと自負しています。
それぞれテイストは違いますが、映画の力を備えた作品ばかりです。
特に『ONCEダブリンの街角で』は作品のバジェットからいけば小規模作品です。アメリカ公開時には2館でスタートだったそうです。それがみるみる間に140館公開にふくれあがったと言います。とはいえ、アメリカでの140館という数字自体がそれほど大きな数字ではないのでしょうが、2が20倍になったという事実はすごいことです。それだけ、多くの人の心を捉えたということになります。
作品の本質は作られた段階で決まっている訳なのでそれが伝わるか否かはその後の問題でもあると思います。その後の問題自体は映画を上映する立場にあるものがじっくりやっていけばいいことですが、力のある作品を上映せずに終わる事程もったいない事はありません。
そういう意味で、この『ONCE ダブリンの街角で』をご紹介出来る事が嬉しく、そして見て頂ける事が嬉しいと思います。これがヒットすれば尚更嬉しい。
ダブリンの街角で歌手なる事を夢見て歌い続ける男は、ある日チェコから移民して来た女に出会います。たまたま男と女だったというだけで、恋愛ありきのスタートではもちろんないのだけれど、最初からお互いのペースでしっくりくる関係を築ける訳でもありません。が、音楽がそれぞれの心を惹き付け繋いでいきます。そのくだりがなんだかとてもロマンティックでもあり、素直に共感も出来るのです。
魂が触れ合う相手が宇宙のどこかに必ずいて、その形はさまざまであるけれども、自分がいて、人がいるからこそ、自分の存在自体を肯定し前へ進む力を与えられる。その出会いのきっかけを作るのが音楽であり、人生の一歩を進む為に背中を押してくれるのも音楽だった、そんな物語です。
主人公の男をアイルランドの実力派バント、ザ・フレイムスのフロントマンであるグレン・ハンサードが、女をチェコのシンガーソングライターのマルケタ・イルゴロヴァが演じているのですが、この二人の存在自体がすでに音楽に包まれていてまさに映画と人物がぴったりと合っています。
監督は、かつてザ・フレイムスのベースを務めていたジョン・カーニー。音楽への愛情と人間への愛情がすべて詰め込まれているように感じられる素敵な小品です。シネマテークたかさきという小さな劇場だからこそなおさら、音楽と映像にすっぽりと包まれた感覚でご覧頂けると思いますので未見の方は是非是非ご覧ください
「ONCEダブリンの街角で」を第2スクリーンで観させていただきました。
shioさんのおっしゃるとおり、本作品は小品ですが心に残る気持ちの良い作品でした。
印象に残ったのは主人公の抱える無惨に穴のあいたギターです。こんなボロボロの楽器でも感動を与える事ができるのです。感動はそれを何とか伝えたいと思う人の心から生まれるのですね。
「インランド・エンパイア」は初日、2日目と大変だったようですが、なんとかお客様にきちんとした状態で作品を観ていただきたい!という支配人の頑張りで3日目以降は普通に鑑賞する事ができました。私もその一人です。そんなシネマテークたかさきを私は応援したいと思います。
投稿: 穴のあいたギター | 2007年12月28日 (金) 00:45