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ペルセポリス

フランス在住のイラン人女性監督マルジャン・サトラピによるアニメーション映画『ペルセポリス』が現在公開中です。

フランスでベストセラーとなった監督による同名グラフィック・ノベル(漫画)が映画化されたもので、白黒のハッキリとした線の絵は少し懐かしい、昭和の頃の漫画を思い出させます。

上映に併せて、原作のグラフィック・ノベルⅠⅡと監督の著書「刺繍」も販売しています。
グラフィック・ノベル20080227121248
Ⅰ 1,470円
Ⅱ 1,575円
刺繍 2,415円

ご来場の際には、是非お手にとってご覧ください。

3月7日(金)までの上映です。

"幸(さち)"の裏側

Sachiari  映画のフィルムは縦方向に24コマ/1秒のスピードで流れる。1度ご覧いただくと分かるのだがこれは結構なスピードである。そしてこのフィルムの流れが連続したものではなく、間欠運動だということを説明すると大抵の方は驚きを隠さない。間欠運動をしているということは、フィルムに光があたる映写窓ですべてのコマが1度止まっているという意味である。なんと働き者の映写機でありフィルムであろうか。このことを思うとき僕はいつも彼らの働きぶりに感心してしまう。事実、映写室では朝から晩までこの運動が繰り返されているのである。しかも基本的には休業日無しで、この"仕事"は毎日続いている。
 この間欠運動を支えているのが、映写窓の入口と出口につくられるフィルムの"たわみ"である。ループと呼ばれるこの"たわみ"がなければ、フィルムが流れてしまったり、強いテンションが掛かってフィルムそのものを痛めてしまうことになる。それ以外の部分では、スプロケット(歯車)の爪をパーフォレーション(フィルムにあけられた穴)が弛みなく渡っていくのだが、2箇所だけもうけられたこの"たわみ"のおかげで映像がガタつかないような仕組みになっている。
 今週、オタール・イオセリアーニ監督作品がシネマテークたかさきに初登場した。『ここに幸あり』だ。こうしてまたひとつ、マエストロの作品を迎えられたことが何とも嬉しい。そう、そして今回もまた相も変わらず、『素敵な歌と舟はゆく』『月曜日に乾杯!』の流れにのって、生きることにおける"たわみ"の大切さを面白可笑しく投げかけてくれている。
 しかしながら困ったことに、「映画は人生」などと言って、お客様にいい映画をお届けしておりますという風を装いながら、人生の何たるかを映画そのものから学んでいないのが、実は映画館なのだ。毎日休むことなく、朝から晩まで、24コマ/1秒のスピードでフィルムは回り続けている。僕らは映画館というものはそこを訪れるすべての人々のためにあるのだから毎日開いているのが当然と思っているし、またそうしなければ、劇場経営も成り立たないからだ。"たわみ"がなければ映写が成り立たないことを十分承知しているにもかかわらず、映画館は毎週プログラムを変え、毎日緊張状態を続けている。もしかしたらイオセリアーニ作品を上映するのに、もっとも相応しくない施設こそ常設映画館なのかもしれない。これぞ、"イオセリアーニ・パラドックス"とでも命名しようか。
 映画館ならずとも、そういった緊張状態の連続に「?」を投げかけ続けているのが、グルジア生まれのイオセリアーニ監督だ。この人生の先輩はよくご存知なのだ、緊張状態がしばしば負の流れの源流になりかねないことを、そしてそのことの恐ろしさを。『ここに幸あり』ではお気楽極楽ムードの反面、人々の対立がちらほらと描かれている。作品の裏側にある何かについて、僕らは気に留めておかなければならないだろう。フランスの移民の間に広がっている不満と社会の亀裂を。昨年、監督の故郷グルジアで発動された非常事態宣言のことを。そして世界を極度の"緊張状態"に陥れた、あのヨシフ・スターリンが監督と同郷のグルジア生まれだということを。

 とまあ、こんなこんな風に小難しいことを考えながら、映画を観てはいけないということもおそらくイオセリアーニは言っているのだろうけど(笑)。

奇跡

Tenten2 ♪流行遅れの 恋の歌 今も君は口ずさむ
 季節はずれの風が吹く 冷たい墓の上に

『転々』のエンディングで流れるのは、ムーンライダーズの1976年の曲、『髭と口紅とバルコニー』だ。車内で流して聞いている。聞いているとよく分かる。死んじまった人間は帰ってきやしない、だけど帰ってきてくれたらいいよなあ、そんな「奇跡」を人は願い続けるのだと。

『転々』は独特の切なさを携えた映画である。50歳を過ぎた?借金取りのオヤジと借金を抱えた大学8年生の男。父と息子がそうであるかのように、世代の異なる男同士というものは、大抵相容れない付き合いになるものだが、この映画で実現しているのはそういうふたりが、"ふたりだけ"で東京散歩をするという非現実で気味の悪いシチュエーションだ。だがしかし、このふたりは息子のいないオヤジであり、親に捨てられた若造なのだ。そこがミソである。何やら『フィールド・オブ・ドリームス』的な臭いを発しつつ、ふたりは東京中を練り歩く。

ご覧になった方はお気づきになったかも知れないが、実は今、シネマテークで人の死がテーマの対照的な2作品が上映されている。カール・ドライヤーの『奇跡』は、三木聡の『転々』の対極にある作品だ。シネマテークの待合に流れているのは、死者が生き返るという「奇跡」と、死者は決して生き返らないという「現実」の前で人はどう生きるのかという深遠なテーマである。ドライヤーが聖なる作家で三木聡がそうではないと誰が言い切れるであろう。『奇跡』と『転々』、2スクリーン体制になったからこそ、この田舎町で巡り合うことになった2作品かもしれない。ああ、これもまた「奇跡」なのかもしれない。この「奇跡」をどうぞご堪能あれ。

転々

『転々』16日(土)から上映はじまります。

上映にあわせて、完売続出噂の「東京お散歩ルートート」を限定数販売!!

Omote Ura都内では即日完売!というこのミニトートバッグ、かわいいだけじゃなく布地もしっかりしていて使い心地もバッチリです。

どうしても欲しい方、予約はできませんので是非お早めにお求めください!

このほか、TLM.トラベルショルダーポーチ“転々”コラボモデルも販売します!色は黒・グレーの2色(写真は黒)あり。

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詳しくは公式ホームページでご確認ください。↓

http://tokyosanpo.jp/news/032/

新スクリーン

 2月4日の休館に、2階劇場のスクリーンを新設致しました。
なぜ、12月にオープンしておいて、2月に新設なのかのご説明を。

当初予定していたものの状態があまり良くないとの判断をした時点で、新設を検討したのですがなんと、現在、映画上映用のスクリーンというのは国内生産を行っていないとの事で、あれやこれやと時間がかかりました。
 そして長い長い船旅を終え、シネマテークたかさきにたどりついた、というわけです。あの大きなスクリーンどうやって運ばれてくるのかと言うと、まず一つにおられていまして、それが太巻きのように巻かれてきます。それを広げて張ります。
 プロの方に教えていただきながらシネマテークたかさきスタッフが張りました。
ピーンと張って、その後一晩おいて調整、すなわち伸びてくるのでさらに引っ張る。
技師さんの説明によると、引っ張って、冷えると縮んで、あったまるとまた伸びる。もちろんわずかですが、そうやって馴れて いくのだそうです。
 ということで、晴れて馴れて完成したきれいなスクリーンで、映画をご堪能いただけます。

それから、もう一つ。劇場のイスの高さも、調整しました。段差があまりなく見にくかった列を整えました。これもスタッフで一日がかりで行いました。

 映画を楽しむ空間を、その都度自分たちで感じながら探りながらこれからも手作りで、少しずつ整えて行きたいと思います。

 是非是非、シネマテークたかさきへ足を運んでいただけたら嬉しいです。

 皆さまの声で成り立つ映画館です。今後とも、どうぞご理解ご協力のほど、よろしくお願い致します。