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ヒトラーの贋札:誇り

  4月にして早くも、今年はすでに何本もの 唸る作品に出逢っておりますが、この『ヒトラーの贋札』もまたもや唸ってしまう一本です。3週間の上映ですがおそらくあっという間でしょう、皆さんどうぞお見逃しなくご覧頂きたい一品です。

 これは、ナチスドイツにおいて紙幣贋造に強制的に従事させられたユダヤ人たちの壮絶な物語。ナチス政権下のお話は数々ありますが、改めて、当時のヒトラーの世界征服の思想や活動の大きさと恐ろしさに震え、そして人間が人間を卑しめることの惨さと、生きる事を天秤にかけられるというあってはならない過去の事実から目をそらしてはならない事を実感させられました。同時に、行間を読む作業をいくつも残す映画の醍醐味に優れた物語でもあり、語弊はありますが、面白い、映画です。
 贋造師ソロヴィッチの収容所に行く前の飄々とした風格と彼をとりまく<普通の生活>から一転、収容所に行ってからの下りは、一瞬も気を許す事なく画面を見つめ続けてしまう緊張感に満ちたものがあります。人を人と思わない暴行といたぶりが、ベルンハルト作戦のために技術者としてソロヴィッチたちを<使う>時には、ほんの少しばかりの優遇さを見せる。その、堪え難いむちの後の飴に、彼らはすがるしかないものの、果てに待ち受ける最悪の結果を知っている彼らの恐怖が、否が応でも画面から伝わるのです。集められた彼らはそれぞれに優秀な技術を持ち、それゆえにおそらく完璧な仕事を成し遂げられる。故に、完璧にならない方法も知っている。いつかは他人の手によって断たれてしまう自分の命を知りながら、その駆け引き。
 おそらく実際も、そうやって死の恐怖から逃れる為に贋札造りに従事しながら、悪と正義の狭間で揺れ動く人々がいたに違いないけれど、この物語が本物らしい輝きを見せるのがやはり、自分の技術に対する自信と誇りが彼らの中にあったに違いない、その部分を描ききっているところだと思いました。
 とにもかくにも。
力作です。お見逃しなく。
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