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アフター・ウェディング:必要な孤独

 

Pic_4_1_2006_8_39_06316 好調な出足を切った『いのちの食べかた』の後ろでひっそりと始まった(単なるイメージですが…)『アフターウェディング』。いい作品だけに、地味さが先行してうまくお客様に浸透しなかったらもったいないと心配していましたが、お客様の反応は上場で少しほっとしています。個人的にはとても好きな作品です。
 デンマーク出身のスサンネ・ビアは、2002年に発表したドグマ作品『しあわせな孤独』で一躍世界的にも脚光を浴びることになりました。かねてより本国ではその才能は高く評価されていて徐々に本国から世界へとフィールドを広げ、昨年はついにドリームワークスで新作も製作され、日本でも今後公開されるだろう大活躍が期待される女流作家のお一人です。
 彼女が描くのは、人間そのもの。ささやかな生活を静かに営んでいても、自分の力ではどうにもならない、<他の力>によってそれまで平穏だった日常がいつ何時がらりと変わるかわからない。人はそういうとてつもなく大きなゆらぎの中で、生きています。忍び寄る悲しい運命は、受けた自分も大きなダメージを受けるけれど、人が生きるという事は決して自分だけでそのダメージを留める事は出来ず、その周りをも取り囲んでしまう、そんな人々を本作でも冷静に見つめていきます。
 インドで孤児の世話をしているヤコブにとって、今一番欲しいものは施設を安定させる為の資金。そんなとき莫大な費用を投資してくれる実業家が現れます。資金を受ける為に、彼はその実業家ヨルゲンの元を訪ね、昔の自分にも対峙していく事になります。インドでの生活を第一に考えていたヤコブとデンマークで家族の事をおもうヨルゲン。彼らそれぞれの愛の形が、いつしかさまざまな運命をも巻き込んで周囲の人生をも変えていきます。
 そんなどうにもならない運命を、人はそれぞれの想いで受け入れ消化し進まねばならず、むしろ進んでしまう人間の弱さと強さにスサンネ・ビアは迫っていくのです。
 人を愛する事の責任と、その想いの強さは人それぞれ。本人には正しい選択でも与えられた方にはそれが必要かどうかは結局のところわからないわけです。確実な答えがないからこそ、それでも人は自分なりの方法で相手を思うしかない。そこに、絶対的に逃れられない孤独がある。その事を恐れてはいけないのだろうと、この映画を見て考えてしまいました。
 愛する事の責任は、いつか、生きる事の責任となり、そして生きていく居場所を自らの手でみつけることになるのだと、この物語は語りかけているようでした。
 インドでの土をイメージさせる躍動感とデンマークでの緑をイメージさせるしっとり感の対比といったにくい画づくりや、人の表情を捉える距離感のあるカメラワークも見所ではないかと思われます。デンマークが生んだ恐るべき才能お見逃しなきように。

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