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グレゴリー・モギ

Pale_horse_2  昨年11月に総支配人 茂木正男が亡くなって以来、実に様々な方々の様々な思いを頂戴した。僕の知らない茂木正男像を、言葉としてたくさん聞かせていただいた。「いくつもの思考と視点を体験する」という意味で、それはまさに映画的な体験であった。そしてそんな体験を映画的だと感じた瞬間、映画をもっともっと観なければいけないと反射的に思った。「自分以外の思考と視点を得ること」、それこそが僕らの人生にふくらみをもたらすと、今ははっきり思うのだ。
 本日2月11日は『日曜日には鼠を殺せ』の上映日。茂木さんの追悼上映の日である。とうとうこの日が来てしまった、というのが正直なところだ。もともと僕も『ジャッカルの日』が好きで、茂木さんも『日曜日には鼠を殺せ』が好きだったものだから、シネマテークたかさきがオープンする前に、いつかフレッド・ジンネマンの特集でもやりましょうなんて話もしていたのだけれど、よもやこんなかたちでこの作品を上映することになるとは思ってもいなかった。
 『日曜日には鼠を殺せ』は、ミニシアター総支配人が生涯の1本というにはあまりにも大味なキャスティングではあるが、この作品の面白さはむしろ、その細やかな心理描写にあるだろう。こんな褒め言葉はこれ限り言うこともないだろうが、笑われるのを承知であえて言うと、僕には190cmを超えるグレゴリー・ペックの背中と165cmの茂木正男の背中が見事に重なって見えた。それどころか、その理にかなわぬ行動や精神的な脆さや弱さ、ときおり見せる迷いの表情、そして言葉や思いを飛び越えて、最後までその感性で何かを貫き通す姿勢まで、すべてがそんなふうに見えてしまった。話の筋は複雑でもなんでもなく実にストレートなものだ。しかしその中にも、ひとりの人間の弱さと強さ、また出会いがもたらす心の移りかわりなどなど、実に多面的に人物を捉えようとするフレッド・ジンネマンの仕事ぶりが見え、映画の面白さの原点を見せつけられた。ああそうか、僕らの普段の生活では得ることのできないこのような視点を獲得するために、カメラというものは、そして映画というものは生まれたのだ。『日曜日には鼠を殺せ』はそんなことを思わせてくれる実に"映画的な"1本である。
 
 さてさて話は変わって、本日1日限りなのですが、今日は劇場2階に茂木さんの遺影と記帳台を用意させていただきます。館内には舞台挨拶に立ち、満面の笑みをつくる茂木さんの大きな写真も掲示します。グレゴリー・ペックとグレゴリー・モギのまなざしに会いに是非劇場にお越しください。

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コメント

渡邊さん、こんにちは。
そうなんです。あのあといろいろな人の話を聞くとモギさんという人がますますわからなくなる。人それぞれといかにうまく対応していたにかということですね、それも調子がいいというのではなく。
ベストの一本がこれというのにも驚いた。てっきりタルコフスキーの『鏡』かと思っていました。志尾さんから『ホテルニューハンプシャー』もベストだったよねというのを聴いたのも意外でしたが。
とまれ、モギさんの不在というのが信じられない。今年の映画祭でも入り口のところでにやにやしながら待っていて、「いいでしょ、これ」って言いそうな感じです。

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