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繋ぐべきもの

Mirikitani  相米慎二がこの世を去ってから2日後、ニューヨークの世界貿易センタービルがテロの標的となり、多数の人命が失われた。非日常の光景があたりを覆う中で、燃え盛る世界貿易センタービルを背に、反骨の日系人アーティスト、ジミー・ツトム・ミリキタニはいつもの通り路上で絵を描き続け、彼のありふれた日常をその日も送っていた。

 高校生の頃、後にNHK大河ドラマ化された山崎豊子の小説『二つの祖国』に出会った。この作品で僕は、日系人の強制収容という史実をはじめて知った。凄まじい人種差別の記述に唖然としたが、日系人がそんなあからさまな差別を受けたという事実と、苦しみぬいた末に自殺という選択をした主人公の最期をうまく受け止められずに随分と困惑した。

 数年後、今度は強制収容の様子を映画で観ることになる。アラン・パーカーの『愛と哀しみの旅路』だ。小説で描かれていたことは、やはり間違いがなさそうだった。しかし、僕はそこで語られる愛の物語に本能的に逃げ込んでしまい、またもや史実を受け止めようとしなかったような覚えがある。

 そして今年、強制収容を経験した反骨の日系人アーティスト、ジミー・ツトム・ミリキタニを追ったドキュメンタリー・『ミリキタニの猫』と出会った。僕はこの作品で初めて、強制収容させられた日系人を映像で目の当たりにした。ジミー・ツトム・ミリキタニには第二次世界大戦中にカリフォルニア州の日系人収容所ツールレイク収容所に送られた苦い経験がある。ツールレイクは、『二つの祖国』の主人公の両親が送られた収容所でもある。小説に綴られた悲劇の舞台と、そこで生きた実在の人物がクロスした。どうやら今度は逃げ道がなさそうだった。強制収容の歴史は確かにあったのだ。路上生活を送るこの老人の背中がすべてを語っていた。認めたくないことを受け止めるということはつらいことだ。しかし、アメリカ国籍を持ちながらツールレイクに送られた日系人の哀しみが、決して忘れ去られるべきでないことくらい、高校生の僕にだって分かっていたのだ。それは未来へと繋ぐべきものであることくらい。

 「戦争」という言葉には実に多面的な意味がある。犠牲者、被災者、遺族、そして加害者も含めた関係者の数だけ意味が存在する。11月27日~29日に高崎市文化会館で開催される高崎映画祭事務局主催の「オータムレイト上映会・繋ぐ未来のために」は、そんな戦争の多面的な意味の一部を実にリアルに捉えられるまたとない機会だと思う。特攻隊の帰還兵、ひめゆり学徒隊の生存者、広島・長崎の被爆者の方々の証言、激戦地ニューギニアからの帰還兵のその後の生き様、そして日系人強制収容の憂き目にあったジミー・ツトム・ミリキタニの人生。今後の世界を見据えるにあたって、僕らが知っておかなければならない史実を語る5作品が並ぶ。「オータムレイト上映会」の詳細はこちらから。前売券はシネマテークたかさき受付窓口にて取扱中。また、『ミリキタニの猫』は当館でも12月8日からの上映が決定している。これら作品を知らずにこれからを生きることは、今の僕には考えられない。きっとそれは誰にとってもそうだろう。それほどのラインナップだと僕は心から思っている。

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