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"転"機

Tenten_2  先日、平日だったけれど、仕事を終えてからクルマを走らせ渋谷へ。『転々』レイト上映、何とか間に合いました。どうしても、観たかったんですよねえ。だって作品から何とも言えないいい香りが、ぷんぷん漂っているんだもの。

 84万円の借金を抱えた大学8年生・竹村文哉(オダギリジョー)は、借金取りの男・福原愛一郎(三浦友和)に、訳あって(この"訳"が大した"訳"なのだが)吉祥寺から霞ヶ関までの東京散歩に付き合わされることになる。報酬は100万円。ただし、その散歩に期限は無い。福原の気が済むまで一緒に歩く、それが条件。あの三浦友和が、まさかこんなチンピラ役を演じることになるとは・・・。世の中どう転ぶかなんて誰にもわからないよな・・・、とつくづく思う。周囲の何人かの方に聞いた話によると、三浦友和がそれまでの二の線から三の線へ転換したきっかけは、相米慎二の『台風クラブ』で演じたあのダメ教師役なんだという。確かにこのことは、三浦友和自身がeiga.comでもコメントしている。http://eiga.com/special/show/1306_2

 『松ヶ根乱射事件』の山下敦弘監督も、『茶の味』の石井克人監督も、『台風クラブ』の三浦友和を観てオファーしたのだという。そう、冒頭で「いい香り」と言ったのは、僕がこの話を聞いていたからに他ならない。それは、相米慎二が蒔いた「三浦友和の第二の役者人生」の種が、この『転々』で見事に開花したしたのではないか、という予感である。相米慎二と言えば、借金取りによる債務者への"痛めつけ"から始まった、三浦&オダギリの関係が妙な方向に進展するのを眺めるにつけ、ふと『あ、春』、そして『風花』を思い出した。『転々』は、『あ、春』と『風花』に徒歩のリズムと三木聡流の「くだらねー」をブレンドした快作であり、怪作である。僕の脳裏に、『あ、春』の佐藤浩市と山崎務、『風花』の浅野忠信と小泉今日子の関係とその顛末がよみがえる。人と人の関係は変わる。同じ時間を過ごし、寝食を共にし、肩を並べて歩くことで。転々、転々と。

 それにしても相米慎二だ。『ションベン・ライダー』、『台風クラブ』、『お引越し』等々、相米作品で綺羅星のごとく光輝く少年少女たち。しかし、この人の対役者を語る上での功績は、永瀬正敏、河合美智子、工藤夕貴、田端智子ら若手を育てたことにとどまらない、心からそう思う。愛すべきダメ男に見事"転じた"三浦友和55歳、その人を見ていると。

 『転々』の三木聡監督作品『図鑑に載ってない虫』はいよいよ今週末スタート。シネマテークたかさき設立3周年記念・相米慎二監督特集は12月8日から。『転々』の上映についての情報は、もうしばらくお待ちください。それにしても、相米慎二監督特集、楽しみで仕方がない。いてもたってもいられない思いです。

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