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ミッキー・ロークの復活   『レスラー』

 『レスラー』が2008年ヴェネチア国際映画祭の金獅子賞をはじめとして、様々な映画賞を受賞し、また第81回アカデミー賞にもノミネートされたとき、多くのメディアで、「ミッキー・ロークの復活」という表現を目にしました。

1980年代には美貌とセクシーさが魅力でセックスシンボルとして人気を博した彼は、数々の話題作に主演しましたが、90年代に入ると人気が下降。ライトヘビー級のプロボクサーとしても活動し、その後遺症による整形手術、肥満になどによって風貌が変化してしまい、俳優としての活躍の場を失っていき、不遇のスランプ時代を14年間も送ることになるのです。この『レスラー』は、俳優としての彼が10数年ぶりに主役としての演技を認められ、華々しい表舞台で評価された復帰作といえる作品なのでしょう。

 『レスラー』の主人公、プロレスラーのランディは、かつては栄光の頂点を極めたスーパーヒーローでしたが、20年が経って人気は下がり、金、家族、名声のすべてを失ってしまった中年レスラー。この作品では、プロレスラーのリングの外での、いわば舞台裏の人生も赤裸々に描かれています。リングに上る前の控え室でのレスラー同士の会話や、試合後のシーンはここまで映画にしてしまって大丈夫?と思うほどですし、またレスラーとしての体力や外見を維持するために、痛々しいほど身を削って努力していることが、生活感も加わってとてもリアルに感じられます。

この舞台裏の描写があるからこそ、プロレスのリングシーンがいっそう重みをもって迫力あるものになってくるのです。また、プロレスラー以外の部分、男として、父親としてのランディはあまりにも生き方が無器用で、観ていて切なくなってきます。

 もう、ミッキー・ロークが演じているというよりも、ランディ・”ザ・ラム”という1人の中年レスラーが実在しているように思えてしまうくらい、演技を感じさせない、役になりきった熱演でした。実生活でも家族、財産、名声、仕事の何もかも失ったミッキーの苦しい経験が、そのまま生かされて役にいっそうの深みを与えてくれているような気がしました。

実は、私は若いセクシーな頃の彼の作品をほとんど観ていないので、『レスラー』と比較するために色々観なければ・・・と思っていたのですが、今は昔の彼の作品を観るのはもうちょっと先にしようかと考えが変わりました。プロレスラー、ランディ・”ザ・ラム”の余韻を、まだしばらくの間は大切にしておきたいからです。

 『レスラー』を観た後、今年3月の第81回アカデミー賞の主演男優賞発表の映像をあらためて見直してみました。今回は、今までのオスカー授賞俳優・女優が1人ずつ候補者を紹介するという何とも豪華な発表でした。『ガンジー』で主演男優賞を授賞したベン・キングズレーは、オスカー候補者である、『レスラー』のミッキー・ロークをこのように紹介しました。(以下、NHK BS2の授賞式映像の字幕より抜粋しました)

 「 『レスラー』のランディ・ロビンソンは リングと人生への復活を果たした男。色あせた金髪男がこんなに気になるのは何故? 理由は1つ、ミッキー・ロークです。 正直な俳優だからこそ 強烈な印象を残しました。 人生が思うようにいかなくても、やり直すことの尊さを知っているからです。 君には表舞台が合っている。王者、ミッキー・ロークの復活です。(Welcome back, the returning champ,Mickey Rourke! )  」

 素晴らしい作品です。『レスラー』は8月28日までの上映です。是非ご覧下さい!

Resler

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