フォトアルバム
Powered by Six Apart

最近のトラックバック

 

« 『靖国』上映に際して | メイン | ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 8/9から上映です! »

休漁

Tokyosonata

 原油価格高騰から来る全国一斉休漁のニュースとセットで、日本人の魚離れが巷で話題になっている。原因は肉料理に比べて、魚料理は手間がかかるからだとか。裁く手間もそうだが、食事の際に骨を除く手間、食後に焼き網を洗う手間などが総じて、「面倒」ということになっているらしい。そして、これに子供たちの「魚嫌い」が加わり、子供の好みが優先される食卓では特に「魚離れ」が進んでいるようだ。
 「手間」と「子供の好み」、これらには映画業界も悩まされてきたことだし、またこれらにすり寄るように解決を導き出し、なんとか生きながらえてもきた。もう何年も「肉体的にも、時間的にも不自由な映画館で映画を観る」ことが「手間」とされ、家庭内でビデオ・DVDを気楽に視聴したがる傾向は変わらないし(それで映画を観たことにしてしまう勘違いの傾向も)、夏休みともなれば、劇場が「子供向けの作品ラインナップ」で集客を求める傾向も変わってはいない。
 さて、魚を食すことは、僕らが誇る文化だ。文化というものは繁栄もするが、簡単に衰退もする。大人たちが子供たちに魚を食す喜びを教え、伝える努力をしなければ、この文化はきっと滅びる。すでに「魚がなければ代わりの何かで」というような家庭の声が、「魚離れ」の記事の後に続いている。そこには、本当に魚が売り場から消えてなくなるとまでは思ってはいない余裕が感じられる。
 『靖国 YASUKUNI』がスタートして3日が過ぎた。平日の今日も、多くのお客様にご来場をいただいた。平日は常に苦戦を強いられている劇場としては、大変にありがたいことである。しかし(やはり)、お越しいただいているお客様の多くは年配の方々。劇場で映画を観るという「手間」を、喜びと感じられる大人の方々だ。当館では『靖国 YASUKUNI』終了後、やはり戦争を題材としたドキュメンタリー、『ひめゆり』の上映が控えている。そして、26日からの『ぐるりのこと。』、その後に続く『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』『接吻』『歩いても、歩いても』など、骨が多くて簡単には食べにくいラインナップで、僕らはこの夏を勝負しようと考えている(もちろん、そうでない作品もあるが)。夏休みだというのに。
 日本全国一斉休漁の犯人が、原油価格の高騰を招いた投機筋であることに間違いはないだろう。しかし、果たして犯人は本当にそれだけか。僕は日本全国の映画館が上映を止める日のことを想像してみる。阪本順治の『闇の子供たち』や黒沢清の『トウキョウソナタ』のフィルムが、映写機に掛けられることなく放置されている映写室で、僕は映画が当たり前に上映されていたときの喜びを空想し、落胆している。こんな日が来ないことを祈るばかりだ。
 傑作は、良質の観客と上映環境から生まれる。末端の現場こそが、業界全体を変えることができる、僕はそう考えている。「映画離れ」を食い止めるために、僕らは何ができるだろうか。明日15日、日本全国で"漁"が止む。

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://app.kazelog.jp/t/trackback/24816/13118841

休漁を参照しているブログ:

コメント

コメントを投稿

コメントは記事の投稿者が承認するまで表示されません。