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どちらでもない世界

Park2  『パーク アンド ラブホテル』の素晴らしさについて、もう少し続けよう。ラブホテルのオーナー・艶子と関わることになる3人の女性にはそれぞれに事情があって、それぞれに人生の壁にぶつかっている。彼女たち3人の生き方やものの考え方にも、多少の問題はあるだろう。もう少しなんとかならないものか、そんな思いがあたまをよぎらないわけではない。しかしこの映画は、そんな彼女たちに宿る問題の良し悪しを語ることなく、そこはかとなく淡々と綴る。「問題あり」の3人を決して悪者(わるもの)にすることもない。彼女らを迎える艶子も、観察者でも傍観者でもない目線でそれに応えている。まさにこのフラットな感覚こそが、この映画のリアリティを生んでいるのだと思う。
 物語の登場人物を悪く仕立てるのは容易い。そこに善人を創り出すのも。しかし、その2つを明確に描いた上で、「ほら、やっぱり善人にこそ幸せは訪れるのです」というようなオチをつけることには甚だ疑問だ。そんなストーリーは、現実世界のどこにだって転がっちゃあいない。誰もかれもが善であって悪であって、そのどちらでもない。それが現実だろう。この映画が僕らを惹きつけるのは、そんな「見極めることができない現実」をしっかりと見極めている点にあると思う。
 今週が上映最終週の『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』も、そういう意味では実に見事に物語の内に「悪」を創っていない。たぶんそれは若松監督がもっとも気をつかったポイントではなかっただろうか。僕はこんな風に思っている。簡単に何かを「悪」と決めつけられなかったからこそ、『実録・連合赤軍』が誕生したのだと。被害者でもあると同時に加害者でもあるという彼らの抱える不確定要素こそが、まさしくこの事件が現実世界で起こったものとしての何よりの証拠であり、事件をいまだに「わからないもの」とし、総括から遠ざけている理由ではないか。
 この2つの作品は、善と悪とそのどちらでもないものが混じり合う現実から逃げていない。今年のベルリン国際映画祭が、この2作品に最優秀アジア映画賞・国際芸術映画評論連盟賞(『実録・連合赤軍』)と最優秀新人作品賞(『パーク アンド ラブホテル』)を贈ったことはとても興味深いことだ。たとえば世界がわかりやすく単純な二元論でできているならば、映画を観ることにはきっと意味がない。だけど僕らはいま、映画を観ずにはいられないような、わかりにくく複雑怪奇な世界に生かされている。そのことだけは確かだ。

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