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シアトリカル:三位一体

 

Photo 声を大にしてお伝えしたい『シアトリカル』の面白さ。
 <シアトリカル>とは、theatrical 1.演劇的な 2.芝居じみた という意味で、正直、観るまではこのタイトルがいささか頂けないんではないか、と思っていたのですが、これ実にいいタイトルです。

 これは唐十郎という、希代の天才演劇人と、彼を崇拝する唐組のメンバーと、それから才気あふれる一人の映画監督、誰一人が欠けても成立しない、まさしく三位一体<ドキュメンタリー>なのです。

まず、唐十郎。
 唐十郎さんは1940年生まれなので今年68歳。年齢というのはいろんなところに出て来るところだとは思いますが、この人の何がすごいかというと、目。少年のような目。と正直思いました。くるくると目まぐるしく変わる表情、動き、目つき、言動、全てが猪突猛進、天才的、破天荒、本当にこんな人がすぐ側にいたら周りの人間たまったものじゃない、と、思う。だがしかし。そのたまったもんじゃないはずの人、というのは往々にして魅力に溢れているわけで、どういうわけか引き込まれてしまう。勝手気侭なわがまま男というだけならば、誰もがついていくはずなどなく、何故に人々が自ら巻き込まれようとしてしまうのかといえば、はやり唐十郎の<芝居大好き>に他ならないだろう。寝ても覚めても芝居、彼の血肉は芝居。芝居。全部が芝居。
簡単に言っているようでこれというのはすごい事だ。自分はおろか、周りの人間までもそこに引きずり込んでしまって平気な顔をしている。とにかく芯がぶれない。だから人がついて来る。偏執狂唐十郎は、いつでも大真面目に芝居をする。

そしてそこに食らい付く劇団唐組の14人。
 一時期は40人以上いた劇団員も、撮影当時は14人。そのうち給料がもらえるのは唐を含めた7人だけ。台本は全て手書き、劇団員それぞれが手書き。役者は自ら劇場となるテントを張り、舞台セットを作り、チケットを作り、チラシを作り、売りさばく。全部手作り。地方公演にいくときは合宿状態の民宿(のようなところ)が鉄則、食器は持ち歩き、自炊。それがかれこれもう50年近く続いているスタイル。これには恐れ入る。
 入団20年目を迎えた鳥山さん、久保井さんらベテラン陣も紅テント公演ではもちろんすばらしき役者ではあるが、一般的には知られていないだろう。いわゆるメディア露出がないからである。そのことについて、監督が彼らに質問するシーンがある。他の表舞台でやっている人々をうらやましいとかおもわないのかと。それに対して言う台詞がすごい。
「唐十朗に一番近いのは俺たちだよ。」この誇り。映画を観ながら私が唸ってしまったのは言うまでもない。偏執狂唐十朗に20年以上ついていくのだもの、彼らも立派な芝居狂いであり、誰にもまね出来ない才能を持ち合わせている。だから一人一人の劇団員がまた魅力的。誰一人かすんでいかないのだ、映画の中で。

それをまんまと映し出したのが大島新監督。
 大島渚の次男である、新監督はこれが劇場デビュー作。世界的な映画監督大島渚を父にもった幼少期は苦悩に満ちていたようだけれど、父の背中を見て育った少年は、映像の世界に飛び込み、そこでドキュメンタリーという領域で本領を発揮していく。父と近いようで違うフィールドでのスタート。新監督はまずテレビのドキュメンタリー制作で地位を確立していき、実績を残している。
情熱大陸の唐十郎の回を担当したのが唐十朗との出会いで、「唐さんはテレビで収まる人じゃない」ということで今回の映画企画がスタートしたのだそうです。
 監督の風体はいたって<フツー>。生き方に力が入ってない、ように見える。実際にお会いした事もない人を捕まえて言うのもなんですが、そんな風に見える。というか感じる。
 そう。映画を観ていて監督の姿が見える、それこそドキュメンタリーの真髄なんじゃないかと実はちょっと私は思っている。
 この映画の醍醐味はドキュメンタリー映画の監督の存在がなんとなーく見え隠れして、最後にきっちり俺の映画だ、と見えて来るところ。これにはさらに参ったのでした。
 被写体を余すところなく活かし、泳がししているこの裁量がなければ、このおもしろき<シアトリカル>は成立し得ない。

 と。またもや勝手に私はそう観たのですが。
皆さんはいかがでしょうか…。

 是非。是非。ご覧ください!!

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